◎目次
- リスニング力が伸びない3つの理由
a. 科学的に正しい学習法を知らない
i) 第二言語習得論はスペイン語学習に応用できる!
ii) 科学的に正しい「インプット」とは?
b.「調整されたスペイン語」だけを聞いている
c. たった一回しか聞いていない
2. 動画を学習に取り入れるとリスニング力が向上する理由
a. 本当は動画ではなく、Podcastを聴いてほしい
b. 動画学習の利点①:自然なスペイン語のため適切な負荷かがかる
c. 動画学習の利点②:コンテキストと一緒に覚えることができる
d. 動画学習の利点③:短い動画のため繰り返しの視聴に向いている
¡Hola, todos!
こんにちは、のぶしーと(
@Nobu_Spanish)です。
今回もスパニッシュ・オンラインの一生徒として、記事をお届けします。
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この記事を読んでいるあなたは、きっとスペイン語を本気で学びたいと考えている方でしょう。これまで、さまざまな学習方法を調べたり試したりしてきたのではないでしょうか?
それでも「なかなか思うようにスペイン語が上達しない」と感じている方も多いかもしれません。
実は、私も長い間、同じ悩みを抱えていました。正しい方法を知らず、しかも英語も得意ではなかった私は、スペイン語学習においてたくさんの遠回りをしてきたのです。
だからこそ、この記事を通じて私は心からこう伝えたいのです。「私と同じ失敗を繰り返してほしくない」と。
そのため、本記事では耳障りの良いアドバイスは一切省き、スペイン語学習に本当に必要なことだけをお話しします。
中には、聞くのが少し辛いと感じる内容もあるかもしれません。しかし、「本気でスペイン語を伸ばしたい」と思っている方には、きっと価値のある内容だと信じています。
もし「そこまで真剣ではない」という方は、今の時点でこの記事を閉じてしまっても構いません。
でも、「これからスペイン語学習を本気で変えたい」と思う方は、ぜひ最後までお付き合いください。
では、始めましょう。
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今回は、動画(短編映画)を活用してリスニング力を爆上げする方法をシェアします。
この記事を最後まで読むことで、以下のメリットが得られます。
- 科学的に正しいリスニング学習法がわかる
- 非効率な学習から抜け出すことで時短ができる
◎この記事はこんな方におすすめです。
- 先生の言うことは聞き取れるのに、他のネイティブのスペイン語が聞き取れない方
- 「たくさん聞けば聞き取れるようになる」と思っている方
- 「スペイン人は話すのが速いから聞き取れない」と思っている方
1. リスニング力が伸びない3つの理由
a. 科学的に正しい学習法を知らない
i)「第二言語習得論」はスペイン語学習に応用できる!
日本ではまだあまり知られていませんが、海外では第二言語(外国語)を効率よく習得するための研究が盛んに行われています。この分野は「第二言語習得研究(または第二言語習得論)」という学問として確立されており、外国語学習を一種の「科学」として捉える考え方が一般的です。
この記事では、そうした研究の知見を活用して、スペイン語のリスニング力を効率的に伸ばす方法をお伝えします。
本記事を執筆するにあたり、以下の文献やウェブサイトを参考にしました。
ここまで読んで、「これって英語学習の話なんじゃないの?スペイン語に応用できるの?」と疑問に思われたかもしれません。それはもっともな指摘です。
ですが、結論から言えば「応用できる」と私は断言します。
その理由は、私自身の経験です。実を言うと、私はDELE B2に二回も不合格になりました。
当時は学習法がわからず、ただ闇雲に単語を覚えたり、教科書を読んだりしていました。しかし、そんな私が最後にすがったのが、英語学習系YouTuberが語る「第二言語習得論」でした。
この理論をスペイン語に応用した結果、DELE C1とC2には一発で合格。そして、日西通訳として二年半働き、さらに駐日パナマ大使館では大使秘書としての職務も経験することができました。
念のため付け加えておきますが、私は帰国子女でも日系人でもありません。また、外国人のパートナーがいた経験もありません。特別な環境や才能がなくても、正しい学習法を取り入れれば、外国語はここまで上達するのです。
この記事では、そんな「第二言語習得論」を基に、スペイン語学習に応用できる具体的な方法をお伝えしていきます。
ii)科学的に正しい「インプット」とは?
余談はここまでにして、話を「第二言語習得論」に戻しましょう。世界中の優れた言語学者や研究者たちが何十年もかけて効率的な学習法を研究してきたのですから、それを活用しない手はありません。
その中でも特に有名な理論が、スティーブン・クラッシェン教授(アメリカ・南カリフォルニア大学名誉教授)が提唱した「インプット仮説」です。この理論は、第二言語習得研究の世界で最もよく知られているものの一つです。簡単に言えば、「インプット」(聞くこと・読むこと)だけで言語は習得できるとする考え方です。
私自身は、「アウトプット」(特にスピーキング)も言語習得には欠かせないと考えています。しかし、アウトプットを行うためには、まず十分なインプットが必要です。そのため、インプットの重要性を軽視することはできません。
さらに、インプットの中でも「聞くこと」、つまりリスニングの重要性は極めて高いと断言できます。その理由は以下の二点です:
- 言語の本質が音声にあるから:言語はもともと音声で成り立っており、文字はその後に登場したツールです。そのため、音声こそが言語の「本質」と言えるのです。
- リスニングの方が効率的だから:読むことに比べて、聞くことの方が短期間で大量の情報をインプットできます。効率的に学ぶためには、リスニングが不可欠です。
重要性が高いリスニング学習ですが、残念ながら9割以上の学習者が非効率な方法で取り組んでいるのが現状です。
もちろん、学習者自身を責めるつもりはありません。この状況を作り出した原因は、「聞くだけでペラペラになれる」などと誇大広告をする教材や、「ラクに話せる」を売り文句にするインフルエンサーたちにあります。
少し冷静に考えればわかることですが、彼らは自分たちが儲けるためにそうしたキャッチコピーを掲げているだけなのです。
「だから私の言うことを信じてください」と主張するつもりはありません。信じるべきは私ではなく、「第二言語習得論」という科学的な知見です。
クラッシェンが説いたインプット仮説の核となる考え方が、「i(現在のレベル)+1」という公式です。これは、「今の自分のレベルよりも少しだけ上の難易度の教材を使うことが効果的だ」というものです。
具体的に言えば、以下のような基準が参考になります:
- 教材の内容の90〜95%が理解できるレベル
- 15単語の中に1つだけ知らない単語が含まれる程度
感覚的には、「ほとんど理解できるけど、たまにわからない単語が出てくる」くらいが理想的です。
しかし、多くの学習者が簡単すぎる教材や、逆に難しすぎる教材を使ってしまいがちです。そこで、ぜひ一度、あなたが使っている教材の難易度を「i+1」の公式と照らし合わせて見直してみてください。
b.「調整されたスペイン語」だけを聞いている
「先生の言うことは聞き取れるのに、他のネイティブのスペイン語が聞き取れない」と感じたことはありませんか?実は、それは全く不思議なことではありません。
前述のクラッシェン氏は、会話表現には以下の三種類があると提唱しました:
- Foreigner talk:ネイティブスピーカーが、第二言語学習者に合わせて簡単な表現を使って話す話法。
- Teacher talk:教室などで教師が学習者の理解度に合うように調整された話法。
- Interlanguage talk:母語が異なる学習者同士が、十分なスキルがないまま会話をする際に生まれる話法。
さて、もうお気づきかと思いますが、スペイン語のレッスン中に先生が使っているのは、まさにこの「Teacher talk」です。つまり、先生は生徒が理解できるよう、文法や語彙を選び、話すスピードも調整してくれているのです。
厳しい言い方をすれば、「先生の言うことが理解できる」のは当たり前です。そして、このアプローチ自体は教育的に見ても正しいと言わざるを得ません。
なぜなら、前述した「i+1」理論が示す通り、学習者が理解可能なレベルでインプットを与えることが、言語習得には不可欠だからです。
もちろん、生徒の「i(現在のレベル)」が上がれば、先生もそのレベルに応じて徐々に難易度を上げていくでしょう。
さて、話を戻します。「先生の言葉は理解できるのに、他のネイティブスピーカーの言葉が聞き取れない」という悩みの原因は、話法の違いにあります。
先生は「Teacher talk」を使って調整したスペイン語を話してくれますが、日常会話ではそのような親切な配慮は一切ありません。つまり、ネイティブスピーカーの会話では、「過度に調整されたスペイン語」は登場しないのです。
c. たった一回しか聞いていない
社会人やお子さんがいらっしゃる方は、スペイン語学習にまとまった時間を取るのが難しいのではないでしょうか?大学生ならまだしも、多忙な日々を送る中で、スペイン語に割ける時間は限られていますよね。
私自身、22歳で社会人として働き始めてからずっと、仕事と並行してスペイン語学習を続けてきました。だからこそ、時間の捻出に苦労する気持ちはよくわかります。
「スキマ時間を活用しよう」と多くのインフルエンサーが提案しています。確かに便利な考え方ですが、正直に言えば、毎日1時間でも時間を確保して、しっかり学習する方が成果は出やすいです。
とはいえ、あなたはおそらく毎日1時間も取れないほど忙しいですよね。そこで、スキマ時間をどう活用すべきかについて具体的にお話しします。
結論として、耳が空いている時間をすべてリスニング学習に充てましょう。
社会人なら通勤時間、主婦/主夫なら家事や買い物の時間。何かをしていても「耳」は空いていますよね。その時間を最大限活用して、リスニング音声を聞きましょう。ただし、教材は「i+1」理論に基づいて選ぶことが大前提です。
「どの教材を選べばいいかわからない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。もしお手持ちのテキストや教材があれば、それをまずは活用してみてください。
一方で、「使えるテキストを持っていない」や「教材を買う余裕がない。無料でできる方法を教えてほしい」という声もあるでしょう。そんな方のために、無料で使えるウェブサイトやYouTubeチャンネルを下図にまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
リスニング学習の話は、ここで話は終わりません。
なぜなら、「ながら聞き」をしただけでは、ほとんど頭に残らないからです。
「毎日スペイン語を聞いているのにリスニング力が上がらない」と感じている人は少なくありません。
その原因は、多くの場合、次のどちらか、または両方にあります:
リスニング教材は最低でも二回以上聞くことが大切です。これがリスニング学習の基本中の基本です。
さらに、音声を聞いた後は以下のステップを必ず踏んでください:
1.スクリプトを確認する
音声にスクリプト(文字起こし)がついている教材を選びましょう。スクリプトがない場合は、別の教材を探すことをおすすめします。
2.わからない単語を調べる
スクリプトの中で知らない単語やフレーズの意味を調べます。このステップを飛ばすと、次に聞いたときも理解が深まりません。
3.スクリプトを音読または黙読する
スクリプトを使って音声と同じように発音練習をするか、最低限黙読して内容を確認してください。
4.再度音声を聞く
スクリプトを確認し、内容が理解できたら、もう一度音声を聞きましょう。この時点で聞き取れる範囲が格段に広がるはずです。
上記の一連の流れを、私は「リスニング学習」と呼びます。
一方で、音声をただ流すだけで終わる学習法は、「聞き流し」です。
スキマ時間を最大限に活用しつつ、正しい「リスニング学習」を実践してみてください。
2. Cortometraje(短編映画)がリスニング力向上に繋がる理由
a. 本当は動画ではなく、Podcastを聴いてほしい
リスニング力向上には、適切なレベルの教材を選ぶことが重要である点はすでにお伝えしました。
ここでは、次に教材の種類についてお話しします。
動画と音声(ラジオやPodcast)のどちらを選ぶべきかと問われれば、私は迷わず音声をおすすめします。
YouTubeやNetflixなどの動画は確かに便利で、学習に役立つ点も多いです。しかし、動画には大きなデメリットがあります。それは、映像の情報に頼りすぎて「わかった気になってしまう」ことです。
例えば、ネイティブとの会話や動画を視聴した後に「わかりましたか?」と尋ねた際、「なんとなくわかりました」と答える人がいます。この「なんとなく」は、実は危険な兆候です。
なぜなら、多くの場合、実際には内容を十分に理解しておらず、表情やジェスチャーといった視覚情報を手掛かりに、理解したつもりになっているケースがほとんどだからです。
一つエピソードをシェアします。通訳として働いていた頃、この「なんとなく理解」の問題を痛感する機会が何度もありました。
私が在メキシコの日系企業(自動車部品メーカー)で働いていたとき、新人通訳の多くは、仕事が少ない間、先輩通訳が参加する会議に「聴講参加」して学ぶ時間がありました。私も新人時代にそのような経験をしました。
会議後、先輩通訳から「どうだった?」と聞かれ、「なんとなくわかりました」と答えたことがあります。しかし、もし「会議内容を要約してみて」と頼まれていたら、きっと答えられなかったと思います。つまり、「なんとなくわかる」というのは、実際には内容を理解できていない証拠なのです。
本当に内容を理解しているなら、その内容を要約して第三者に伝えることができるはずです。一方で、「なんとなくわかった」と答える人のほとんどが、内容を正確に要約することができません。
動画は視覚情報が多いため、この「なんとなくわかった気がする」状態に陥りやすいのが現実です。だからこそ、リスニング学習にはPodcastやラジオなどの音声教材を活用することをおすすめします。
音声だけの教材は視覚情報に頼ることができないため、純粋に耳と頭を使って内容を理解する訓練になります。これこそが、リスニング力を本当に鍛えるための効果的な方法だと考えています。
b. 動画学習の利点①:自然なスペイン語のため適切な負荷かがかる
では、なぜ動画、特に短編映画(Cortometraje)をおすすめするのか。それは、多くの人がラジオやPodcastに対して抵抗感を持っているからです。
「音声だけで理解するのはしんどい」「スクリプトを後から見る時間がない」と感じる方もいるでしょう。
その点、動画であれば、なんとなく理解できるため、より楽しみやすいという利点があります。字幕付きの動画も多く、スクリプトを別で確認する手間が省けるのも便利です。
私は「ラクな方法=効果が薄い」と基本的に考えていますが、それでも「動画を活用して学びたい」という声に応えるべく、動画を学習に取り入れる方法やメリットについて説明します。
短編映画を視聴する最大のメリットは、自然なスペイン語を聴くことができる点です。レッスンでよく使われる「Teacher talk」とは異なり、ネイティブスピーカーが自然に話すスペイン語に触れることができます。
当然、普段聞いているスペイン語よりも「難しい」と感じることがあるでしょう。しかし、その「負荷」を感じることこそが、動画を活用する学習の意味です。この適切な負荷が、リスニング力を伸ばすカギとなります。
ただし、初心者の方がいきなりスペイン語のドラマを字幕なしで観ても、ほとんど理解できず、学びが薄くなってしまう可能性があります。そのため、短い動画、特に初中級者向けの短編映画(Cortometraje)がおすすめです。
c. 動画学習の利点②:コンテキストと一緒に覚えることができる
これはデメリットと紙一重ではありますが、動画学習には、コンテキスト(文脈)と一緒に自然なスペイン語表現を覚えられるという大きな利点があります。
スペイン語の文法書やフレーズ集の例文を見て、「この表現はどういう時に使えばいいのだろう?」と悩んだ経験はありませんか?文字情報だけだと、使う場面を具体的に想像するのが難しいことがあります。
その点、動画を活用すれば、その心配はありません。動画には演者の表情やジェスチャー、前後の文脈が含まれているため、「どのような表現なのか」「どの場面で使えるのか」が視覚的にも理解しやすくなります。
特に短編映画は、5分前後の短い時間でメッセージを伝える必要があるため、比較的わかりやすい表現が使われることが多いです。そのため、スペイン語学習者にとって非常に有益なコンテンツと言えるでしょう。
動画を通じてスペイン語表現を学ぶことで、文法や単語だけでは得られない実践的なニュアンスを身につけることができます。これはテキスト学習だけでは得られない大きなメリットです。
d. 動画学習の利点③:繰り返しの視聴に向いている
リスニング学習では、同じ教材を二回以上聞くべきだと前述しました。同じ理屈で、動画教材も繰り返し視聴することをおすすめします。
もし、一度目の視聴で全てのスペイン語を100%理解できたとしたら、それは教材が簡単すぎる証拠です。その場合は、もう少し難しい教材を探してみましょう。
短編映画を繰り返し視聴するメリットは、スペイン語のセリフを繰り返し聞くことだけではありません。短編映画は短い分だけ無駄なシーンがなく、例え無音のシーンであっても、そのシーンが挿入されている理由が必ずあります。一見意味のないように思えるシーンも、実は大きな意味を持つことが多いのです。
「なぜこのシーンがあるのだろう?」や「前後のセリフとどんな関係があるのだろう?」と想像を巡らせてみるのも、学習の一環として楽しめるはずです。
また、せっかく視聴した短編映画は、オンラインレッスンのテーマとして活用してみることをおすすめします。内容を要約して講師に説明できるようであれば、その動画をしっかりと理解できている証拠になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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