ネイティブの話すスペイン語のスピードに慣れるためのコンテンツや、スペイン語学習に役立つ情報を随時アップしていきます。
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◎⽬次
1. ラテンアメリカを知らないのは「もったいない」
2. スペインへの偏重とラテンアメリカへの偏⾒
3. 駐⽇パナマ⼤使館で学んだ「⼤使館間格差」
4. 「私には関係ない」と思ってはいけない(グアテマラ編)
5. 「私には関係ない」と思ってはいけない(パナマ編)
¡Hola, todos! こんにちは、のぶしーと(@Nobu_Spanish)です。スパニッシュ・オン ラインの⼀⽣徒として、今回から不定期で記事を寄稿させていただくことになりまし た。
さて、みなさんはスペイン語が公⽤語の国がいくつあるか、ご存知ですか︖
「21 カ国でしょ︖それくらい知ってるよ︕」という声が聞こえてきそうですね。 で は、「ラテンアメリカの国々についてはどのくらい知っていますか︖」
おそらく、メキシコやアルゼンチンといった⼤国以外の国や地域については、あまり 詳しくない⽅が多いのではないでしょうか。
実を⾔うと、私⾃⾝もメキシコに働きに⾏くまでは、ほとんど情報を持っていませんで した。
今回は、私が 12 年以上にわたるスペイン語学習を通じて得たラテンアメリカに関する 情報を、余すことなくお届けいたします。
◎この記事はこんな⽅におすすめです。
• スペイン以外のスペイン語圏について知りたい⽅
• スペイン語学習のモチベーションを⾼めたい⽅
• これまでスペインにしか興味を持ってこなかった⽅
スペイン語を学ぶ理由を聞くと、10 ⼈中 2 ⼈は「多くの国々で話されているから」や 「5 億⼈以上が話しているから」と答えます。しかし、その⼀⽅で、⽇本の学習者は約 4.5 億⼈の⼈⼝を持つラテンアメリカに対して、あまり興味を⽰していないように感じ ます。
ちなみに、スペインの⼈⼝は 2014 年から減少傾向にあります。スペインの国⽴統計研 究所(Instituto Nacional de Estadística)のデータによると、2023 年の出⽣率は約 1.1%で、1941 年以来の最低値を記録しています。
上の図は、スペイン保健省(Ministerio de Sanidad)のウェブサイトに掲載されてい る 2023 年のスペインの⼈⼝ピラミッドです。ご覧の通り、「45〜49 歳」の年齢層が最 も多くなっています。
スペインの現在の⼈⼝は約 4,800 万⼈ですが、今後この数字はさらに減少する可能性 が⾼いと予想されています。
⼀⽅、スパニッシュ・オンラインの多くの講師の出⾝国であるグアテマラでは、2018 〜2019 年の出⽣率が驚異の 2.7%を記録しています(これは 2018 年に同国国⽴統計 研究所が実施した⼈⼝調査の結果に基づきます)。
上の図は、同研究所が発表した 2018 年時点のグアテマラの⼈⼝ピラミッドです。国も 調査年も異なるため、スペインと直接⽐較することはできませんが、両国の⼈⼝分布の 違いは明らかです。
グアテマラでは、15〜20 歳の若年層が最も多く、「富⼠⼭型」の形をした⼈⼝ピラミ ッドを⽰しています。⼀⽅、⾼齢層(65 歳以上)の⼈⼝は少ない状況です。
これは⼀例に過ぎませんし、統計学や経済について深く論じるつもりはありません。た だ、私が強調したいのは、スペイン語を学んでいるにもかかわらず、スペイン語話者の 約 9 割が住むラテンアメリカ、しかも今後も⼈⼝が増え続けると予測されている地域に 興味を持たないのは「もったいない」ということです。
「スペイン語圏の国々」と⼀括りにされることが多いですが、スペインとラテンアメリ カでは、その扱われ⽅に⼤きな差があると感じます。スペインに関する情報やイベント は豊富にある⼀⽅で、ラテンアメリカに関するものは⾮常に少ないです。
例えば、スペインは⼤使館の規模が⼤きく、商務や⽂化などジャンルを問わず、さまざ
まなイベントに積極的に参加することができます。
また、東京都千代⽥区にあるインスティトゥト・セルバンテス東京で開催されるイベン トのほとんどがスペインに関連したものです。表向きは「スペイン語の振興と教育、そ してスペイン語圏⽂化の普及に努める公的⽂化機関」でありながら、個⼈的には明らか にスペイン偏重だと感じます。
もちろん、メキシコの「シンコ・デ・マヨ (Cinco de Mayo)」や「古代メキシコ展」、 ペルーの「おいしいペルー」などのラテンアメリカ関連のイベントが開催されているこ とは知っています。(私も学⽣時代に、こういったイベントに参加してはスペイン語を 練習していました…笑)
しかし、メキシコやペルーのように、駐⽇⼤使館や関係機関の規模が⼤きく、予算に恵 まれている国々でなければ、こうしたイベントを開催することは難しいのが現状です。
残念ながら、グアテマラやパナマのような⼩国が、イベント開催の「実⾏⼒」という点
でスペインに勝つのはほぼ不可能です。それぞれの国々には広報戦略があるとは思いま すが、少なくとも、規模や予算の⼤きさが勝敗を左右する「パワーゲーム」の側⾯があ ることは否めません。
イベントだけでなく、マスメディアや SNS を通じてラテンアメリカを発信する⽅法も 考えられますが、マスメディアではほとんどラテンアメリカのポジティブな話題が取り 上げられません。
取り上げられるときは、たいてい犯罪率の⾼さや通貨価値の暴落といったネガティブな
ニュースばかりです。このような影響⼒のあるメディアが、ラテンアメリカに関して後 ろ向きな情報ばかり発信するため、ラテンアメリカの国々に対して悪い印象を持つ⼈が 多いのは⾮常に残念です。
私がメキシコに⾏くと宣⾔したときも、「死にたいのか︖」とまで⾔われましたが、こ れがアメリカ⾏きだったらそんなことは⾔われなかったでしょう(場所によってはアメ リカも⼗分危ないと思うのですが…)
ここで、世論の是⾮を問うつもりはありません。しかし、「もう少しラテンアメリカの ポジティブな情報をマスメディアが発信してほしい」と願うのは、私のエゴなのでしょ うか︖
「⼤使館で働いていた」と⾔うと、「すごいね」と⾔ってもらえます。きっとそれは、 「⼤使館」という⾔葉が醸し出す「雰囲気」によるものです。仕事内容も、良い意味で 謎めいているので、なんとなく「すごそう」という印象になるのだと思います。
私の浅い経験でいえば、⼤使館の仕事は⼀般的な事務職の仕事です。そのため、⼤使館 で働くことが「すごい」とは思っていません。通常の事務職と違うことといえば、館内 の公⽤語がスペイン語であることくらいです。
それにスペイン語圏の⼤使館で働くことはあまり難しいことではありません。前述した インスティトゥト・セルバンテス東京の「スペインで働く/求⼈・採⽤情報」のページ に、頻繁にスペイン語圏の⼤使館の求⼈が掲載されていることが、その証拠です。実際、 私もこのページで求⼈情報を探していました。
「⼤使館」と⼀括りにされているものの、雇⽤形態や働き⽅は各国によって様々です。 もっと⾔えば、そのときに在籍している⼤使や外交官によっても⾊々変わります。
そして、⼀⼈当たりの業務量にも相当差があります。わかりやすく⾔えば、パナマ⼤使 館の⼤使秘書は⼀⼈ですが、(聞いた話によると)メキシコ⼤使館の秘書は三⼈いるそ うです。もちろん、メキシコ⼤使館の⽅が忙しいのでしょうが、1 対3なら、三⼈体制 の⽅が⼀⼈あたりの負担は少なくなると予想できます。
また、⼤きい⼤使館であれば外交官が⼤勢いますが、⼩国の⼤使館は、外交官が 1〜2 名しかいないことが多いです(パナマは外交官が⼀名でした)。
これはあくまで例ですが、⼤国の⼤使館の業務は細分化され、⼩国の⼤使館の業務は多 岐にわたる(そしてしばしば業務量が多い)という傾向はありそうです。
要するに、⼩国の⼤使館は少⼈数で業務を⾏っている関係上、おいそれと広報活動に⼈
員を割けないのです。
「おいおい、忙しい⾃慢かよ︖」と思った⽅がいるかもしれませんが、そうではありま せん。私が申し上げたいのは、現状ですらラテンアメリカの国々(⼀部の⼤国を除く) は知名度が低く、イメージも悪いのに、広報活動⼒も弱いため、今後ますます影が薄く なっていく可能性が⾼いのです。
ここまで読んで、こう思ったかもしれません。 「グアテマラやパナマなんて、私の⼈ ⽣には関係ない」 と。本当にそうでしょうか︖
ご存知の通り、スペイン語オンラインレッスンを提供する多くの企業(スパニッシュ・ オンラインを含む)は、グアテマラ出⾝の講師を多数抱えています。
私⾃⾝、メキシコに⾏く前からオンラインレッスンを受講していましたが、⽇本でスペ イン語を学ぶ上で、グアテマラ出⾝の講師は⽋かせない存在だと感じています。
当時、私は⼤学⽣だったため、スペイン語学習に多くの費⽤をかけることはできません
でした。それでも、できるだけ多くのレッスンを受けたいという思いから、グアテマラ ⼈講師と積極的に練習していました。
私のスペイン語会話の基礎を作ってくれたのは、間違いなく彼らです。
さらに、グアテマラ⼈講師の素晴らしさについて、もう⼀つ付け加えさせてください。 彼らの多くは、オンラインレッスンだけでなく、対⾯形式のレッスン経験も豊富です。 その理由は、「スペイン語留学先」として、グアテマラが世界で最もコストパフォーマ ンスが良いからです。
なぜそう⾔い切れるのかというと、私はその現実を実際に⾒てきたからです。私はメキ シコ南部の州、オアハカにあるスペイン語学校で働いており、そこで多くの世界中のバ ックパッカーと出会いました。
彼らに「どこでスペイン語を学んだの︖」と聞くと、ほとんどの⼈が「グアテマラのア ンティグア」と答えたのです。彼らはグアテマラで安価にスペイン語を学び、中南⽶の 国々を旅していました。
これはメキシコ留学とグアテマラ留学の両⽅を知る私の主観ですが、コストパフォーマ ンスの観点からいえば、グアテマラ留学の圧勝です。メキシコは思ったほど安くないで すし、メキシコ⼈講師とグアテマラ⼈講師に⼤きな差があるとも感じません(むしろ、 グアテマラ⼈講師の⽅が、質が⾼いと感じることが多いです)。
話が少しそれてしまいましたが、要するに、スペイン語学習者にとってグアテマラは⾮ 常にありがたい存在であり、「無関係」とは到底⾔えない国だということです。
「とはいえ、さすがにパナマは私の⼈⽣に関係ない」と思った⽅もいるでしょう。実を ⾔うと、私もパナマについてはほとんど知りませんでした。⼤使館の⾯接対策で、慌て て⼤統領と外務⼤⾂の名前を覚えたくらいです(笑)。
⼀⾒すると、⽇本とパナマの関係はそれほど密接ではないように思えます。実際、パナ マ産の製品を⽇本で⽬にする機会はほとんどないでしょう。思い浮かぶとすれば、世界 的に有名な⾼級コーヒー品種である「ゲイシャコーヒー」くらいでしょうか。その中で も、パナマ産のゲイシャコーヒーは知る⼈ぞ知る超レア物として知られています。
コーヒー通以外にも通じるキーワードとしては、パナマ運河があります。⼤⻄洋と太平 洋を結ぶ海上の重要拠点として、世界史や地理の授業で習った⽅もいるかもしれませ ん。
パナマ運河が海上輸送の要所であることは多くの⼈が知っているかもしれませ。しか し、パナマ運河を利⽤する国の中で、⽇本が貨物量全体の 13.3%を占め、世界第 3 位 にランクインしていることを知っている⼈は少ないです。
アメリカ、中国に次ぐ第 3 位という順位ですから、経済規模や⼈⼝を考慮すると、⽇本 がいかにパナマ運河の恩恵を受けているかがわかると思います。
数ある海上航路の中でも、特にアメリカ東海岸とアジア間のルートは最も重要であり、
運河を通過する船舶トン数の約 52%を占めています。
これこそが、パナマが⽇本との外交関係を重視する⼤きな理由であり、貿易量(輸出⼊ 合計)の 99.6%を海上輸送に依存する⽇本にとって、パナマが重要な存在である理由 でもあります。
つまり、⽬に⾒えるパナマ産の商品は少ないかもしれませんが、パナマを通じて⽇本に 届いている商品は数多くあるということです。
こうした背景があまり知られていないのも無理はありません。なぜなら、⽇本ではラテ ンアメリカの重要性が⼗分に報道されていないからです。
スペイン語を学ぶ皆さんにとって、ラテンアメリカで起こることは対岸の⽕事ではあり ません。ぜひ、スペインだけでなく、ラテンアメリカの国々にも興味を持っていただけ ると嬉しいです。
これからも、ラテンアメリカの魅⼒や不思議なこと、そしてスペイン語学習に役⽴つ情 報を皆さんと共有していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは、¡Hasta pronto!
以上