Q. 新著『ストーリーで身につけるスペイン語基本会話』を読ませていただきました。
主人公がメキシコに赴任して戸惑いながらも、まずは生活に必要な手続き関係からスタートし、さらに周辺国への旅行などの余暇もスペイン語を使って楽しめるようになっていくまでが描かれています。
読者はこの物語を追いながら実戦的なスペイン語を学んでいけるという、これまでにない、ユニークなスペイン語参考書ですね。
A. ありがとうございます。
このアイデアは社会人になって英語を再勉強した時の経験に基づいています。
受験勉強で読み書きはしっかり身につけた、しかし会話となると中々思うようにいかない、ということをよく聞きます。当時私も同じでした。そこで、同じベレ出版から出版していただいた『企業で必要な英語コミュニケーションを身につける』で紹介させていただきましたが、次のステップで会話の習得を心掛けました
①会話のある物語を正確に、かつ論理的に理解する。
②その英語を聴きながら実際に発音し、自動的に口から出るまで繰り返す。
③その会話は私たちが、日頃そのような状況に遭遇するようなシーンであること。飽きないで、何度も聞けること。
⑤短すぎず、長すぎないこと。CD1枚程度に入る長さが適切。
この方法であれば、自分がストーリーの主人公と同じような情況に置かれたとき、自然と英語が出てきます。
私は、この方法をスペイン語学習でも取り入れ、色々な教材を組み合わせて会話の習得に努めました。そして、運よく、メキシコで生活する機会に恵まれました。
スペイン語圏の代表的な国の一つであるメキシコでの生活を疑似体験いただきながら、スペイン語学習者にこの方法でスペイン語会話を習得していただきたいという思いから執筆しました。
なお、付属のCDではこのプロセスを忠実に実行できるよう工夫しています。
読者は主人公の発言部分を日本語で聞き、自らスペイン語に訳し発音、その後ネイティブのスペイン語で確認するというプロセスが取れるようになっています。
なお、この収録は私が約3年間お世話になった、サラマンカ市のアリアナホテルのオーナー、並びに従業員の方のご協力を得て作成しています。
また、背景音は臨場感が出るように私が実際に色々な場面で録音した音源を使用しています。
CD作成メンバー(左からNelda役、Ana役、著者、Diana役、Kengo役)
Q. 平見さんご自身も日系自動車メーカーの工場立ち上げのためメキシコに駐在しておられましたが、メキシコでは業務でもスペイン語を使われていたのですか。
A. はい、私が担当していた職場はほとんどがメキシコ人でした。 当初は英語で話していましたが、彼らと本当にコミュニケーションを取るにはスペイン語を話すしかないと感じ、本気でスペイン語会話に取り組みました。 半年過ぎたころから約半分はスペイン語、一年経った頃、気づいてみるほとんどスペイン語で話していました。
Q. 本書では日本で発行されたスペイン語参考書で、日本語訳だけではなく、英語も併記されていところも面白いと思いました。
A. 英語を併記することはこの本を企画した当初から考えていました。 日本人は中学・高等学校で英語を6年間じっくり勉強します。最近では小学校から学びます。 ですから、外国語を学ぶ姿勢は英語でできています。この英単語の50%はラテン語系、スペイン語のそれは75%です。ですから、単純に考えて25-50%は共通部分があります。また、本書で英語と異なるスペイン語文法の特徴を3つ挙げていますが、それ以外は英語と類似しています(私がスペイン語での生活を通じて感じた点です)。本書に記述してある対比を見ていただくとご理解できると思います。 ですから、私は英語から入るスペイン語を推奨しています。ある程度スペイン語に慣れてくると英語との類推で話せるようになります。ヨーロッパ人が多言語を話すのは特に驚くことではないのです。
Q. (日本で一般に教えられる)スペインのスペイン語と、メキシコのスペイン語との対比も随所で説明されていますね。
A. 日本で販売されている学習用CDはスペインのスペイン語が多いと思います。これらを聞いて勉強していた私は、メキシコに行くと意外に現地のスペイン語がよく聞き取れました。ラテンアメリカではスペイン語はゆっくり話されているようです。 一方、単語や文法ですが、日本語の「君ら」にあたるvosotrosはラテンアメリカでは用いられません。これは初学者にとっては朗報でした。活用を覚える数が少なくてすみます。また、cogerなど使用がタブーな単語はよく知られています。私は、水泳をしますが、プールの場所をきくときに、「piscinaはどこですか」と聞くと、「albercaはあそこです。」と言われたものです。 勿論、現地の人はテレビや映画の影響でスペインのスペイン語もわかります。 ただ、スペインで用いられる表現を使うと、「我々はそうは言わない」とアイデンティティを主張されます。現地に溶け込むには現地の言葉を使うことが肝要だと思いました。 「郷に入れば郷に従え」ですね。
Q. 平見さんはもともとスペイン語をどんなきっかけで、いつごろから学び始められたのでしょうか。
A. 仕事でメキシコへ行く機会ができてから、スペイン語を学ぼうと思い立ちました。約5年前のことです。 当初は、現地のコンタクト先が英語を話すので英語で十分と高をくくっていました。しかし、コミュニケーション相手のすそ野が広がっていくと、英語が一切通じないということが分かってきました。ある時、お店屋さんで物を買おうとした時、英語のone, two, threeもわかってもらえませんでした。これは、自分がスペイン語を話すしかないと感じました。 その後、NHKのラジオ講座(実際にはCD)や文法書をベースに勉強し、ある時、スカイプでスペイン語レッスンが受けられるスパニッシュ・オンラインにたどり着いたのです。
Q. メキシコ赴任中は、スパニッシュ・オンラインのレッスンはどのように役立てられましたでしょうか。
A. 日本で数か月ほどスパニッシュ・オンラインのレッスンを受けたのちメキシコへ赴任しました。 現地ではウィークデイの朝、早起きをして出勤前に、ほとんど毎日1時間ほどレッスンを受けました。そして、その日の仕事や生活の中で、朝レッスンで習った表現や単語を意識して使うということを心掛けました。 この方法は約3年間の滞在期間継続し、頻度は下がりましたが現在でも続けています。これを続けることで会話力がついていったと思います。
Q. 仮にスペイン語がほとんどできず、日本語と英語だけでメキシコ駐在すると、仕事のうえで何かハンディがあると思われますか。
A. 企業で赴任する場合、通訳さんを介することで、意思疎通はできると思います。但し、常に通訳が傍にいるわけではないので、話す機会を失ったり、通訳が助けてくれるとしても、自分の思うことを100%表現してもらっているかについては疑問が残ります。 また、情報にはフォーマルなものと、インフォーマルなものがあります。オフィシャルには通訳を介してフォーマルな情報は入ってきます。 しかし、インフォーマルな情報は個人的な会話から入ってくることが多く、スペイン語を話さなければこのインフォーマルな情報は入ってきません。 インフォーマルな情報は往々にして仕事に役立つことが多いものです。
Q. ここ数年、ますます日本企業のメキシコ進出が増え、派遣されるビジネスマンの数も増えているようです。メキシコ駐在が決まったビジネスマンや、そのご家族にむけて何かスペイン語に関してアドバイスがあればお願いします。
A. メキシコの文化は特徴的なものが多く魅力的です。 私は、日本の歌謡曲にも似たメキシコの音楽に興味を持ち、この本の中で主人公のケンゴが行っているように、CD屋さんで店員とスペイン語で会話しながら気に入った曲を探すのが好きでした。また、ケンゴと同様に休みには野鳥の写真を撮りに中南米を旅したものです。 訪問先でのガイドや同じような趣味を持った人ともスペイン語で話せば、楽しさが倍増します。仕事以外に興味を持った領域でスペイン語の語彙を増やすというのもスペイン語を学ぶ上では大変役に立つのです。 是非、オープンマインドでスペイン語習得を楽しんでいただきたいと思います。
本書に登場するケツァール(著者がコスタリカで撮影)
最後になりましたが、本書を出版後に、内容理解度をチェックできるよう、各章毎に問題があればよいとご提案を受けました。そこで、問題リストを作成し、出版元であるベレ出版のHome Pageにアップしていただきました(無料ダウンロード):
https://www.beret.co.jp/books/detail/596
回答例(respuesta)も用意しています。こちらも活用いただければと思います。それでは、
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